「呼吸」について
「呼吸」は、うぶ声をあげてから休むことなく行われている生命維持に不可欠な生体活動の一つです。肺は、呼吸によって空気中から酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を体内から空気中に排出するためのガス交換の場になります。呼吸によってさまざまな物質が肺の中に入り込みますが、残念ながら吸い込む空気の違いを目で確認することはなかなかできません。たとえば、大気汚染が問題となっている地域であれば、日常的にPM2.5のような微小粒子状物質を吸い込んでしまっていることになり、喫煙者の場合には、タバコに含まれる有害な化学物質や発癌物質を自ら吸い込んでいることになります。
インフルエンザウイルスや結核菌などは咳を介して、空気中に浮遊している病原体を吸い込むことによってヒトからヒトへの伝染が成立してしまいます。様々なものが原因で肺の病気になってしまうことがありますので、個人の嗜好や日常生活の様子など、問診は詳しく丁寧に伺うよう心がけています。
喘息(気管支喘息)
気道(空気の通り道)の「炎症」が喘息の本態です。炎症が起こってしまうと粘膜が腫れて、気道が狭くなります。そのため、「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」と音を伴う息苦しさが出てきます。
炎症を起こした気道の粘膜は、色々な刺激(冷たい空気、タバコ、ホコリ、動物の毛など)に敏感に反応しやすくなっています。その結果、「せき」がでて「たん」がからむようになります。
喘息の本態である気道の「炎症」に対する治療方針は、そのひと文字である「炎」に例えると分かりやすいかもしれません。言いかえますと、「小さな炎(=軽い炎症)」のうちに早く「消火(=治療)」をすれば早く良くなりますが、「大きな炎(=高度な炎症)」になってしまうと「消火(=治療)」が難しくなってしまうということです。 夜間・早朝の「せき」、「たん」あるいは「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」という音を伴う息苦しさがある方は、早めに医療機関を受診し、早めに治療を受けましょう。
長引く咳
咳の続いている期間により、「3週間以内の咳」、「3~8週間の咳」、「8週間以上の咳」の3つに分類して、頻度の多い病気から順に原因を考えていきます。
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3週間以内の咳の場合
微熱、のどの痛み、鼻汁の
後に続く「かぜの後遺症」が
原因であることが多い -
3週間以上の咳の場合
特に8週間以上続く咳の場合には
「かぜの後遺症」以外の病気が
隠されている可能性が高い
夜、横になって寝ようとした時や冷たい空気を吸った時、会話中に咳が出る方は、咳喘息が疑われます。
また、鼻の症状(鼻水や鼻がつまる)がある場合には、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などに関連した後鼻漏(鼻汁が喉の方へ流れ落ちる)なども考えておく必要があります。咳が「3週間以上」続いている方は、医療機関を受診されてみてはいかがでしょうか。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 「喫煙」による肺の病気で、
- Chronic・・・・・慢性
- Obstructive・・・閉塞性
- Pulmonary・・・・肺
- Disease・・・・・疾患
- それぞれの頭文字をとって「COPD」と呼びます。
タバコを吸っている方、あるいは吸っていた方にとって、非常に重要な病気です。「COPD」の患者数は全世界的に増加しており、2020年までに心臓病、脳卒中に続いて第三位の死因となることが予測されています。「せき」、「たん」などの症状から始まり、次第に動いた時の息切れが増悪します。
安静にしている時の症状は乏しいため、年齢のせいだろうと重症になるまで医療機関を受診されない方もおられますが、以前と比べて階段や坂道で息切れを感じるようになってきた方、同年代の人と一緒に歩いていて少し遅れてしまうようになってしまった方は、「COPD」が疑われます。
「COPD」の診断は、肺機能検査(スパイロメトリー)で行います。テレビや雑誌などで聞くことのある「肌年齢」や「血管年齢」と同じように、肺機能検査では「肺年齢」を算出することで、タバコによる肺の機能障害の程度が分かります。
睡眠時無呼吸症候群
人生の3分の1は睡眠と言われていますが、睡眠時無呼吸症候群になると寝ている間のいびきと無呼吸で睡眠が分断されるため、「睡眠の質」が低下してしまいます。いわゆる夜間に脳がしっかりと休息できていない状態となるため、起床時の眠気や疲労感、頭痛などの症状が生じます。また、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、高血圧や狭心症などの心臓や血管系の病気が増えることも分かってきました。
- 下記項目に当てはまる方は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
- 睡眠中にいびきや無呼吸を指摘されたことのある方
- 会議中や車の運転中に耐えがたい眠気を自覚されたことのある方
まずは、ご自宅での睡眠状況の検査を行います。治療はCPAP療法(持続陽圧呼吸療法:鼻マスクを使用し、気道に圧力を加えた空気を送り込む)が有効です。CPAP療法により睡眠の分断を防ぎ、「睡眠の質」を向上させます。良質な睡眠により日中の眠気が軽減し、仕事の効率が上がることが期待されます。
レントゲンでは見えない肺癌
偶然撮ったCTで、レントゲンでは見えない淡い陰影が見つかることがあります。このような淡い陰影を呈するものの中に増殖スピードがゆるやかな肺癌が隠れていることがあります。数ヶ月おきにCTでのフォローアップを行い、陰影の変化をチェックします。陰影の変化(大きくなったり、濃くなったり)が見られた場合には、外科的切除の適応となります。
- <肺癌のリスク因子>
- 喫煙者・元喫煙者で喫煙指数(1日の喫煙の本数×喫煙年数)が400を超える人
- 同居の方が喫煙者で、受動喫煙の影響がある人
- ご家族内で肺癌に罹患された方がおられる人 …など
CT検査のご要望がありましたら、ご相談ください。当院ではCT検査は行っておりませんので、最寄りの医療機関に紹介させていただきます。